採用を事業成長の起点に変える。HaReエージェンシーが描く伴走支援のかたち
もともと、人前で話すことが苦手でした。
それでも舞台に立てば、目の前の観客に向き合い、笑わせるしかない。お笑い芸人として4年間活動するなかで、飯澤祥平さんは「環境が人を変える」ことを、自分自身の体験として知りました。人材紹介会社、事業会社の人事を経て、2023年にHaReエージェンシーを設立。現在は、採用支援を起点に企業の人事変革に伴走しています。
「人は、環境によって変わる。だからこそ、人事は会社を変えられる」
芸人時代の原体験から、人事支援にかける思い、そしてHaReエージェンシーが実践する伴走支援のかたちについて、代表の飯澤さんに迫ります。
Profile
飯澤祥平
株式会社HaReエージェンシー 代表取締役 CEO
大学卒業後、お笑い芸人として4年間活動。その後、人材紹介会社を経て人事職に転じ、複数社で採用・育成・評価制度に携わる。人事が経営と現場をつなぎ、組織の変化を後押しする役割であることを実感し、2023年に株式会社HaReエージェンシーを立ち上げる。
目次
芸人・人材紹介・人事を経て辿り着いた「人は環境で変われる」という実感
──HaReエージェンシーの原点には、どのような経験があったのでしょうか。
飯澤:中高生のころからお笑い芸人になりたいと思っていました。大学卒業後は芸人の世界に飛び込みましたが、実はもともと引っ込み思案で、人前で話すことも得意ではなかったんです。それでも舞台に立てば、話すしかない。どうしたら笑ってもらえるかを考え続けるしかありませんでした。
結果的に芸人として売れることはできませんでしたが、あの環境に身を置いたことで、自分自身が大きく変わる感覚がありました。人前で話すのが苦手だった自分が、何百人もの前で人を笑わせられるようになった。これは大きな成功体験でした。
──芸人を辞めたあと、人材領域へ進んだ理由を教えてください。
飯澤:自分自身が環境によって変わった実感があったからこそ、人と仕事、つまり環境をつなぐ人材領域に惹かれました。人の成長を支援できる仕事だと思ったんです。ただ、人材紹介会社で働くなかで、少しずつ違和感も出てきました。人と会社をつなぐこと自体にはやりがいがありましたが、ビジネスとしては紹介料や営業目標があり、必ずしもその人にとって一番良い選択だけを純粋に考えにくい場面が出てきたんです。
「人の成長を支援したいと思ってこの仕事を選んだはずなのに、自分は何をしているんだろう」
そう感じるようになっていきました。そこからは、入社前のマッチングだけでなく、入社後にその人がどう活躍していくのかまで見届けたいと思うようになり、事業会社の人事職へ転職しました。
転職後は、採用だけでなく教育や評価にも関わり、人がリーダーへと成長していく姿まで追うことができ、人材紹介の立場では得られなかった手応えでした。
一方で、組織の中に入ったからこそ見えた課題もあります。人事は本来、人と組織を見つめ、会社の成長を支える重要な仕事だと思っています。けれど実際には、経営にも現場にも遠慮してしまい、言うべきことを言えないケースも少なくありません。人事がもっと踏み込めれば、会社は変わるはずなのに。そこに、大きな問題意識を持つようになりました。

──その後、起業を決めたきっかけは何だったのですか。
飯澤:最後に勤めていた会社で、外部コンサルタントの仕事を間近で見たことが大きかったです。その方は社内では変えにくい構造をデータをもとに整理し、各方面からの反発を受けながらも確実に組織を変えていき、結果として利益率が大きく改善しました。
社内では言いにくいことでも、外部の立場だからこそ客観的に課題を示し、変革を後押しできる。人事が変われば、採用も、定着も、組織のあり方も変わっていく。外部から企業に入り込み、人事を起点に組織へ変化を起こす支援ができるのではないか。そう考えたことが、HaReエージェンシーを立ち上げるきっかけになりました。
経営と現場の対話を設計し、人事から変革を起こす
──HaReエージェンシーは「誰もが晴れやかな表情で“はたらける”社会を築く」というパーパスを掲げています。どのような思いが込められていますか。
飯澤:これまで人事を経験するなかで、暗い顔で働いている方をたくさん見てきました。働く時間は、人生の中でも大きな割合を占めます。全員が大きな夢を持つ必要はありません。ただ、今より少しでも前向きになれることや、自分のやりたいことに近づいている実感を持てることは、働くうえでとても大切です。
会社が向かっている方向と、個人が向かいたい方向が重なったとき、人は自然と前を向けるようになります。HaReエージェンシーは、そうした会社を1社でも増やしていきたいと考えています。
──「人と組織の『対話』をデザインし、人事から変革を起こす」というミッションはどのような考えから生まれたのですか。
飯澤:人事は、本来は会社の中で人と組織をもっとも近くで見ている部門です。採用、教育、評価、定着などを通じて、会社の成長に深く関わることができます。一方で、特に中小企業や歴史のある企業では、人事が「守り」の役割に偏りがちだと感じています。
たとえば採用の場面でも、例えば、経営陣は「尖った人材がほしい」と考えていても、現場は「愚直に動いてくれる人がほしい」と感じている。人事がどちらにも強く言えないまま採用が進めば、組織として本当に必要な人材像が曖昧になってしまいます。
そこで必要になるのが、『対話』です。
それぞれの考えを丁寧に聞き、整理し、必要であれば市場データも踏まえながら、会社として採るべき人材像に落とし込んでいく。人事がその役割を果たせるようになれば、採用は単なる人員補充ではなく、組織を変える手段になります。

採用代行で終わらず、自走できる人事組織をつくる
──HaReエージェンシーが目指す採用支援のゴールを教えてください。
飯澤:一言で言えば、内製化です。社内の人事が自分たちで考え、判断し、改善し続けられる状態をつくることを目指しています。
採用支援というと、応募者数や採用人数に目が向きがちです。ただ、外部の支援が終わった瞬間に同じ課題に戻ってしまっては、会社の力にはなりません。採用や人事は中長期で会社の成長を支えるコア業務であるため、支援を通じて培ったノウハウをその会社の中に残していく必要があるからです。私たちが目指しているのは、採用を代行し続けることではなく、その会社の人事部が強くなっていくことです。
──採用支援はどのような流れで進めていくのですか。
飯澤:まず最初の1カ月は、その会社を深く知ることに集中する期間です。
目指しているのは、私たち自身がその会社のことを誰よりも魅力的に語れる状態。経営陣や現場の方にインタビューをして、会社の歴史や事業の強み、現場で働く人の魅力、候補者に伝えるべきポイントを掘り下げていきます。
2カ月目以降は、人材紹介会社、求人広告、スカウトなど、候補者との接点を広げる動きをしていきます。応募が集まってくると、どのような人が書類選考を通過しやすいのか、どのチャネルから有効な候補者が来ているのかが見えてきます。
そのデータをもとに、求人票やペルソナ、採用チャネルをチューニングしていきます。単に応募数を見るのではなく、「本当に会いたい人に届いているか」「入社後に活躍する可能性がある人と接点を持てているか」を見ていくイメージです。
──お客様の内製化はどのように進めるのでしょうか。
飯澤:支援中は、毎週必ず定例ミーティングを行います。応募者数や選考通過率などの数値を確認するだけでなく、候補者一人ひとりの状況についても話します。それだけでなく、母集団形成、選考プロセス、面接、オファー面談など、各工程のマニュアルや資料作成に至るまでも、内製化に必要なことは全て取り組み、その会社に合わせてカスタマイズされた「採用の教科書」のようなものを作っていきます。
大切なのは、経営・現場・人事の間に入り、それぞれの考えを整理しながら、実際の運用に落とし込んでいくことです。外部が成果を出して終わるのではなく、その会社の中に「採用の型」を残していくことを意識しています。

人事が変われば、会社の成長の仕方が変わる
──人事に課題を感じている企業へ、どのようなことを伝えたいですか。
飯澤:主にご相談いただく内容は、「採用できない」「人が辞めてしまう」といった表面的な課題であることが多いのですが、掘り下げていくと、「事業成長と採用がつながっていない」「ビジョンと人材要件が接続されていない」といった構造的な問題が見えてきます。
採用や人事を単なる実務として捉えるのではなく、経営と現場をつなぎ、会社の成長を支えるものとして見直していく必要があります。大切なのは、「採用できない」という結果だけを見るのではなく、その奥にある組織のズレや、人事の関わり方まで見にいくことです。そこに向き合うことで、会社は変わり始めると思っています。
──顧客企業と向き合ううえで大切にしていることはありますか。
飯澤:まずは、その会社のことを本気で好きになることです。
私たち自身が「この会社に入ってほしい」と思えていなければ、候補者にも魅力は伝わりません。事業の背景や歴史、そこで働く人たちの思いまで理解したうえで、その会社の人事部になりきるような感覚で支援に入っています。
ただ、寄り添うだけでは足りません。対等なパートナーとして、言うべきことはきちんと言うことも大切にしています。以前、支援先の社長から「飯澤くんは不言実行だよね」と言っていただいたことがありました。社長がやりたいことや、会社としてやるべきことを噛み砕き、具体的なアクションに落とし込み、愚直に実行していく。その姿勢は、今も大切にしています。
私たちは、綺麗な提案をして終わる会社ではなく、実際に入り込み、動かし、成果につなげる会社でありたいと思っています。
──今後の展望を教えてください。
飯澤:「人事が会社を変えられる」ということを、もっと多くの企業に実感してもらいたいです。HaReエージェンシーが目指しているのは、採用人数を増やすことだけではありません。経営と現場が対話し、人事が自信を持って提案できる状態を支援先の企業と一緒につくっていきたいと考えています。
働く中で、少しでも前向きな変化が生まれる。昨日より少し晴れやかな表情で働ける人が増える。そういう会社を、1社ずつ増やしていきたいですね。

